タイヤの寿命を決める様々な要因
タイヤの寿命はどうして決まるのでしょうか。長距離の走行により溝がなくなる摩耗だけでなく、変質や空気圧の過不足などでも劣化が進み交換が必要となります。様々な要因と、それぞれの対策についてご紹介します。
タイヤは消耗品です。使い続けていればいつかは交換しなければならないものですが、使用する環境や使い方によって、タイヤの寿命は大幅に異なってきます。
今回はタイヤの寿命を決める様々な要因と、それぞれの対策についてご紹介します。
目次
タイヤの磨耗
当たり前のことですが、タイヤは路面と接することでエンジンからの駆動力を伝えます。路面と接している部分は磨耗し、タイヤの溝が浅くなっていきます。溝の減り具合がスリップサインまで到達すると、タイヤとしての寿命を迎えたということになります。
一部でもスリップサインが出ているタイヤを用いて走行することは違法とされており、車検もパスできません。タイヤの寿命を延ばすためには磨耗を軽減することが近道となります。
タイヤの寿命を延ばすテクニックとして、急発進、急制動、急ハンドルを避ける、といったことが挙げられます。すなわち、安全運転を心掛けることでタイヤの寿命を延ばすことができます。
燃費も向上するため、日頃から安全で無理のない運転を心掛けましょう。車が静止している状態でハンドルを切ることも避けましょう。車が静止している状態でハンドルを切ることは、タイヤにやすりがけをしているようなものです。当然、タイヤの寿命は縮まります。
また、タイヤの取り付け位置によっても寿命は異なります。自動車の前方にはエンジンや運転者による荷重がかかるため、前輪のタイヤが磨耗しやすい傾向があります。多くの車に採用されている前輪駆動方式(FF車)の場合、エンジンからの動力が伝達されるため、前輪の磨耗がより早くなります。
また、方向転換もタイヤに負荷をかけます。一般に、FF車における前輪タイヤの寿命は後輪に比べて1/2~1/3ほどであると言われています。前輪のタイヤはアスファルトと接する部分のうち両脇が磨耗しやすく、後輪のタイヤは中央が磨耗しやすくなります。
以上のような取り付け位置の違いによる磨耗の偏りを抑制する手法として、タイヤのローテーションが挙げられます。定期的に前輪と後輪のタイヤを入れ替えることでタイヤの磨耗を均一化でき、タイヤの寿命を延ばすことができます。
ローテーションは走行距離にして5,000kmごとに行うと効果的であると言われています。ローテーションは前輪と後輪のタイヤサイズが同じである必要があります。
また、タイヤによっては取り付ける方向が決められているもの(方向性タイヤ)もあるため、ご自身でローテーションを行う際には注意が必要です。ディーラーやカー用品店でローテーションを行ってくれる場合もあります。工賃もさほど高くないため、安全性を考慮するなら専門の作業員に依頼した方が確実でしょう。
タイヤの変質
溝が残っていても、タイヤが寿命を迎えている場合があります。タイヤのゴムは様々な環境要因によって劣化するためです。使用状況にもよりますが、サマータイヤの場合は6年、スタッドレスタイヤの場合は3年程度が寿命であると言われています。
購入時期から数えて上記の年数を経過したタイヤは寿命を迎えているため、仮に溝が残っていたとしても新しいタイヤへ交換するべきです。
他にも、タイヤがどの程度劣化しているか判断する目安のひとつとして、側面や溝の谷間に表れているひび割れが挙げられます。小さく浅いひび割れが表れている場合は問題無く利用できますが、小さなひび割れが繋がって大きく深い亀裂となっている場合は要注意です。
タイヤの骨格、カーカスと呼ばれる部分までひび割れが達していると、バースト(破裂)する可能性が高くなります。
※参考URL: 日本自動車タイヤ協会の点検要領
http://www.jatma.or.jp/tekisei/pdf/tyre.pdf
タイヤを変質させる要因は様々にあります。代表的な要因は紫外線です。紫外線は樹脂やゴムに対する攻撃性が高いため、直射日光を浴びると急速に劣化が進行し、寿命が縮まってしまいます。紫外線に加えて、高温もタイヤの寿命を縮める大きな要因となります。
夏場に駐車する際はなるべく直射日光を避けましょう。駐車場に屋根が無く、日陰が得られない場合にはカバーをかけるだけでもある程度紫外線を遮ることができます。
ゴムが水分を含むと、加水分解と呼ばれる現象が発生します。湿潤な環境は車体の錆びなど、タイヤだけでなく様々な部位に影響します。また、深い亀裂へ水分が浸入すると、タイヤの内部から損傷が進むセパレーションと呼ばれる現象が発生しやすくなります。
屋外を走る以上、雨や水に晒されることは避けられませんが、タイヤの寿命が縮まりやすいという認識は持っておくべきでしょう。
タイヤの表面に付着する様々な汚れもタイヤやホイールの劣化を速めます。例えば、凍結しやすい道路には融雪剤として塩化カルシウムが散布されます。塩化イオンはタイヤの寿命を縮めるだけでなく、ホイールを錆びさせてしまいます。洗車の際には車体だけでなく、タイヤも洗うようにしましょう。
なお、タイヤには製造過程で保護成分が配合されているため、洗剤は不要です。水とブラシで丁寧に汚れを落としましょう。洗った後はよく乾かすことも重要です。乾いた布で水分を拭き取り、日陰で乾燥させましょう。
空気圧が適切でない場合もタイヤの寿命を縮めます。空気圧が低すぎる場合はタイヤの両脇が磨耗しやすくなります。また、路面に接地している部分が潰れるようになるため、ひび割れの程度が進行しやすくなります。
逆に、空気圧が高すぎる場合はタイヤの中央が磨耗しやすくなります。障害物にぶつかった際の傷も大きくなりやすいため、メーカーが指定する空気圧を保つようにしましょう。タイヤの空気は1ヶ月で10%程度も抜けてしまいます。空気圧チェックはガソリンスタンドなどで気軽に行えます。最低でも1ヶ月に1度は空気圧をチェックしましょう。
タイヤをケアする重要性
経済的なメリットの他に、事故を予防するという観点からも、タイヤの寿命を適切に延ばすよう心掛けることは重要なことです。タイヤは車だけでなく、乗員の命をも支える重要なパーツです。タイヤのケアをおろそかにしていると、スリップ、パンク、バースト等のトラブルによって乗員の命が危険に晒されるリスクを抱えることになります。
理想としてはタイヤが寿命を迎える前に交換を行うべきですが、車検に出すまでスリップサインが現れていることに気づかなかった、ガソリンスタンドのスタッフからひび割れを指摘されて初めて気づいた、という場合も多いでしょう。
少しの工夫と意識付けで、安全性を高めることができます。まずは、車に乗る前や車から降りた直後にタイヤをちらっと見る習慣を付けましょう。ひび割れやスリップサインに気づきやすくなります。
運転中の揺れが大きい、雨天のブレーキにいつもより時間がかかる、といった違和感を覚えたらまずタイヤを疑いましょう。タイヤの空気圧が下がっている、あるいはスリップサインが出現している可能性があります。
まとめ
今回はタイヤの寿命を決める様々な要因と、それぞれの対策についてご紹介しました。タイヤはいつか交換しなければならない消耗品ですが、寿命を延ばす方法は様々に存在します。タイヤの寿命を延ばすにあたり、気を付けるポイントは大まかに以下の三点です。
・安全運転を心掛ける。
・タイヤを過酷な環境に置かない。
・タイヤの空気圧を指定の圧力に保つ。
タイヤの寿命を適切に延ばすことは、経済的なメリットだけでなく、運転時の安全性を高める効果もあります。今回の記事をきっかけに、磨耗や劣化について意識できるよう、ちょっとした工夫をしてみてはいかがでしょうか。