目次
スタッドレスの効果とは
スタッドレスタイヤが活躍するのは冬のシーズン。
特に、ノーマルタイヤではスリップしてしまうアイスバーンや凍結路面を安全に走行するために、スタッドレスタイヤは必須です。
凍結路面を走る際、スタッドレスタイヤは次に挙げる3つの効果を発揮します。
性状安定効果
タイヤの材質はゴム。ゴムは低温環境で硬化する性質があります。
ノーマルタイヤが凍結路面に適していないのは、ゴムが硬化することで本来のタイヤの性能が発揮できないことが理由です。
一方スタッドレスタイヤは硬化しにくい素材を使っているため、持っている性能を十分に発揮できます。
路面への吸着効果
スタッドレスタイヤとノーマルタイヤの見た目を比較すると、大きく異なるのが接地面に刻まれたトレッド(溝)の形状や数です。
一般的にはスタッドレスタイヤのトレッドは数が多く、深くできています。
これによって地面への吸い付き効果をより強くし、凍結路面でも高いグリップ力を発揮するのです。
排水効果
凍結路面とタイヤの間には、ごく薄い水の膜ができます。
ノーマルタイヤは寒さでゴムが硬化するため柔軟性を欠き、水膜を弾き飛ばすことができなくなってしまいます。
そのためハイドロプレーニング現象が起き、スリップしてしまうのです。
一方スタッドレスタイヤのゴムは柔らかさを保っているため、薄い水膜を効率よく弾き飛ばし、ハイドロプレーニング現象を防ぎます。
スタッドレスタイヤの寿命は?
スタッドレスタイヤは主に冬場に使用するため、1年で使用する期間は数ヶ月。
保管期間のほうが長くなりますので、タイヤの寿命が分かりにくく感じる方も多いでしょう。
スタッドレスタイヤの寿命は何で判断すれば良いのでしょうか。
トレッドの深さで判断
タイヤは走行距離が長くなれば摩耗し、ノーマルタイヤの場合ですとトレッドが残り1.6mmになった時点でスリップサインが出現し、寿命だと判断できます。
一方、スタッドレスタイヤはある程度の溝が残っていなければ路面への吸着に支障をきたしますので、新品のトレッドから50%摩耗した時点でプラットホームが出現します。
つまり、スタッドレスタイヤはプラットホームが出現したら寿命だと判断できます。
しかしスタッドレスタイヤとしての性能が発揮できないだけで、スリップサインが出るまで通常路面の走行は可能です。
製造からの年数で判断
スタッドレスタイヤの寿命は製造から3年といわれています。
タイヤの側面には製造年週が刻印されていますので、そこから3年経過したスタッドレスタイヤは寿命と考えましょう。
ゴムの劣化で判断
スタッドレスタイヤの保管を屋外で行っていたり、カバーを掛けていない場合はゴムの劣化が進んでいる可能性があります。
ゴムは劣化により硬くなりますが、触っただけで判断できる方はそう多くありません。
そのため、保管環境があまり良くないと感じる場合は、カー用品店やガソリンスタンドでスタッドレスタイヤの硬さを測定してもらい、劣化度合いを判断すると良いでしょう。
スタッドレスタイヤの適正な空気圧
車のドア内側にはタイヤの適正空気圧シールが貼られています。
しかしこの数値はノーマルタイヤの空気圧ですから、スタッドレスタイヤの空気圧に悩まれる方も多いのではないでしょうか。
また、路面の状態によって適切な空気圧が異なるという考え方もあるため、判断に困る部分です。
スタッドレスタイヤの空気圧はどのように設定したら良いのでしょうか。
適正空気圧に合わせるのが基本
シールに書かれた適正空気圧は、その車がベストな状態で走行できる空気圧ですので、スタッドレスタイヤも適正空気圧に合わせましょう。
冬場に朝から夜まで走行した場合、新雪の道もあればアイスバーンもあるかもしれません。
そのたびに空気圧を変えることは不可能ですので「タイヤは車ごとの適正空気圧に合わせる」のが原則です。
走行環境と同じ気温で空気を充填する
スタッドレスタイヤの空気圧を調整する場合、走行環境と同じぐらいの気温のもとで行いましょう。
タイヤの空気圧は気温によって変動し、気温が10度上下すると空気圧が10kPa上下するといわれています。
雪のない地域で空気圧を設定してから寒冷地に行くと、設定値を下回る可能性があるのです。
そのため空気圧調整は走行環境に合った場所で行うか、寒冷地に行く場合は予め空気圧を高めに設定しておくと安心です。
なお空気圧は多少高すぎても走行に影響が出にくいのですが、低いとタイヤの性能が落ちる可能性があることを覚えておきましょう。
スタッドレスタイヤとチェーンの違い
冬の高速道路で見かけるのが「チェーン規制」です。凍結の恐れがある場合や積雪量が多いときに出されます。
この場合はタイヤチェーンを装着するか、あるいはスタッドレスタイヤを装着していなければ走行できません。
また、「全車チェーン規制」の場合はスタッドレスタイヤでは走行できず、タイヤチェーン装着車のみ通行が可能となります。
いずれも冬の走行には欠かせないものですが、どんな違いがあるのでしょうか。
価格が違う
まずは価格が異なります。タイヤチェーンは金属製のものでタイヤ2本分が3,000円程度から。
非金属製のものでも5,000円ほどでタイヤ2本分のチェーンが購入できます。
スタッドレスタイヤは1本5,000円以上しますので、タイヤチェーンの方が安上がりです。
装着の手間が違う
スタッドレスタイヤはシーズンに合わせて装着すれば、シーズンが終わるまで交換不要です。
凍結路面だけでなく乾燥路面の走行もできるのがスタッドレスタイヤの利点ですね。
一方タイヤチェーンをつけたまま乾燥路面を走行するのは好ましくありません。
常に積雪がある地域であればタイヤチェーンを装着したままにできますが、そうでなければ必要に応じてその都度装着しなければなりません。
耐久性が違う
金属製のチェーンは伸縮性がないため、急なハンドル操作やブレーキによって千切れてしまうことがあります。
非金属製のチェーンは金属製より耐久性はあるものの、急制動には弱いといえるでしょう。
製品に記載されている寿命は5年ほどですが、こまめな脱着が必要です。
一方スタッドレスタイヤは、冬場のみの走行で保管環境に気をつければ3〜4年ほど使用できるとされています。
氷上や新雪ならタイヤチェーン
タイヤチェーンはスタッドレスタイヤと比較して凹凸が大きく、凍結路面や柔らかい雪にしっかり食い込むことができます。
スタッドレスタイヤも性能が向上し、特に凍結路面でのグリップ力はタイヤチェーンに劣らないところまで進化しましたが、新雪走行の安定性はタイヤチェーンに敵いません。
圧雪や雪の坂道はスタッドレスタイヤ
スタッドレスタイヤが威力を発揮するのが、圧雪や雪が積もった坂道です。
チェーンは駆動輪2本に装着しますが、坂道走行ではチェーンを付けていない2本がグリップできず、走行が安定しません。
出せる速度が違う
スタッドレスタイヤは特に速度制限がなく、ノーマルタイヤのように100km/hを出しても問題ありません。
タイヤの材質が柔らかいため、乾燥路面の高速走行中に急制動をすれば摩耗が進みますが、その場で走行不能になることはないでしょう。
一方、タイヤチェーンを装着しているときの推奨速度は金属製で30km/h以下、非金属製で50km/h以下となっています。
これ以上の速度で走行するとチェーンが切れやすく、規制路面であれば走行できなくなってしまいます。
乗り心地が違う
凹凸が大きいタイヤチェーンは振動が吸収できず、乗り心地は期待できません。また走行音も大きくなります。
それに比べればスタッドレスタイヤは非常に静かで、乗り心地も良いといえるでしょう。
スタッドレスタイヤを夏に使うリスク
スタッドレスタイヤは秋の終わりに装着し、春を迎えれば取り外します。
タイヤ交換には交換工賃や手間がかかりますので、できればスタッドレスタイヤを装着したままにしたいと考える方も少なくないでしょう。
しかし、スタッドレスタイヤを冬以外、特に夏場に使用すると様々なリスクがあるのです。
燃費が悪化する
スタッドレスタイヤは、凍結した路面でもしっかりとしたグリップ力を発揮します。
これはタイヤが路面に吸着した際に起きる摩擦力によるものです。
乾燥路面では摩擦力がなくてもスリップすることなく進みますが、スタッドレスタイヤはトレッドの形状上、摩擦を起こさずに走行できません。
そのためタイヤの進みが悪くなり、燃費が悪化します。
また、スタッドレスタイヤは溝を深くするためにタイヤに厚みを出しています。
その分タイヤの重量が重くなるためタイヤの転がりが悪くなり、更に燃費を悪化させます。
バーストの危険がある
炎天下の路面温度は60度を超えるといわれています。
スタッドレスタイヤは熱の影響を受けて更に柔らかくなり、深いトレッドは変形して亀裂が入りやすくなります。そのまま放っておけばバーストする危険があるのです。
走行スピードが早く、急制動が多くなる高速道路では特に注意が必要です。
ブレーキが止まりにくくなる
水膜を弾き飛ばす効果を持つスタッドレスタイヤですが、実は雨天走行を苦手としています。
雨の路面にはもちろん水の膜ができていますが、氷上にできる水膜とは厚みが違います。
スタッドレスタイヤの細くて深いトレッドは、薄い水膜を吸い上げて弾き飛ばすのには効果的ですが、雨天の厚い水膜には力を発揮できず、ハイドロプレーニング現象を起こしやすくなります。
スタッドレスタイヤを正しく使えば凍結路面も怖くない!
寒冷地へのドライブ旅行ではできれば雪が降ってほしくないと思うのが当然ですが、思い通りにはなりません。
しかし、スタッドレスタイヤは正しく使えば冬の路面を安全に、安定して走行することが可能です。
安全走行のためには、スタッドレスタイヤの寿命や空気圧をしっかり確認し、夏場は紫外線や風雨が当たらない環境で保管すること。
これらを守って、冬のドライブを楽しみましょう!