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ホイールナットの種類や選び方を解説!
車とタイヤ・ホイールを繋ぐホイールナット。
手の中に簡単に収まってしまうほど小さな部品でありながら、数トンの車を動かすタイヤ・ホイールをグッと掴んで離さない「小さな巨人」ともいえる重要なパーツです。
どの車のホイールにも似たようなホイールナットが取り付けられていますが、実はいくつもの種類があります。
ホイールに適合しないホイールナットを使用すると運転中にナットが緩み、大事故につながる可能性があります。
今回はホイールナットの種類や選び方、緩みが出ない取り付けのポイントについてご紹介します。
ホイールナットの種類
ホイールナットは見た目の形状や機能性で分類されます。
ホイールに合致しない形状のホイールナットを取り付けてしまうと固定力が弱くなり、ホイールから外れてしまう可能性も。
まずはご自身のホイールに使われているホイールナットがどれに該当するのかを確認しておきましょう。
袋テーパーナット
内部が袋状になっており穴が見えない形状になっているナットは、袋ナットと呼ばれています。
中でもホイールに差し込む側がテーパー、つまり先細りになっているナットが袋テーパーナットです。
一般的な社外ホイールの多くは、袋テーパーナットを使って取り付けるようになっています。
袋テーパーナットは更にスタンダードタイプとショートタイプに分けられ、ショートタイプは径が小さいホイールに用いられています。
実はテーパーの角度によって更に細分化されている袋テーパーナット。
国内のカー用品店やネットショップで売られているもののほとんどは60度ですが、特殊な角度のナットも存在しますので、購入する際は確認したほうが安心です。
袋ナットは片側がクローズしているため外からボルトが見えず、見た目がスッキリします。そのためセンターキャップがないホイールに最適です。
貫通ナット
袋テーパーナットの両端がオープンになっているのが貫通ナットです。その名の通り、ボルトに締め付けると貫通します。
袋ナットのような天井がない分、深く締め付けられるのがメリットです。
ナットの穴からボルトが見えてしまい、袋ナットのようなスッキリした見た目にはなりませんが、天井の厚みを気にしなくて良いため、センターキャップ付きのホイールに向いています。
平座ナット
ホイールと平面で接するのが平座ナットです。
トヨタやレクサス車などの純正アルミホイールに多く採用されており、このナットが流用できるように社外ホイールの一部でも平座ナットを採用しているものもあります。
ホイールと面で接しているため摩擦力が強く、ナットがブレにくいというメリットがあります。
球面ナット
テーパーナットのテーパー部分に丸みを持たせた形状をしているのが球面ナットです。ホンダ車の純正ホイールは球面ナットを採用しています。
テーパーナットよりもホイールとの摩擦力が生まれやすいため、緩みが出にくいのがメリットです。
見た目がテーパーナットによく似ており間違えやすいので、購入や取り付けの際は注意が必要です。
ロックナット
意匠性が高いホイールは憧れの的。そのため運悪くホイールが盗難に遭うケースもあります。これを防ぐのがロックナットです。
各社様々な機構のロックナットを発売していますが、専用のアダプターを使わなければ外せない外溝型が主流です。
ナットの側面に作られた溝にアダプターをはめ込まなければナットが外せない仕様になっています。
ホイールナットに使われる素材
ホイールナットは形状に加え、素材によっても数種類に分けられます。
それぞれの特徴を知ることで、自分の車に最適なホイールナットが見つかるのではないでしょうか。
スチール
スチールナットは製造コストが安いのに強度があり、ネジ山など細かい部分まで高精度で製造できるのがメリットです。
そのため、多くのメーカーが新車装着ホイールの取り付けに採用しています。
サビが出やすい素材なので、劣化が目立ってきたら交換すると良いでしょう。
ジュラルミン
アルミナットの一種であるジュラルミンナットは、カラーバリエーションが豊富なのが特徴です。
塗料でコーティングするのではなくアルミそのものをアルマイト加工することで着色しています。
そのため、色が剥げてしまうことがありません。
スチールと比べると非常に軽く加工しやすい素材なので、個性的なデザインのナットの多くにジェラルミンが用いられています。
一方で、熱によって変化しやすいアルミを使っているため、ホイールが熱せられるような環境(オフロードやレース)で運転する場合は、ナットの緩みがないかこまめに確認しましょう。
クロムモリブデン
スチールナットとジュラルミンナットの弱点をカバーしているのがクロムモリブデンナット、通称「クロモリナット」です。
熱による変形が起きにくく、強度があるのに軽いという特徴を持ちます。
向かうところ敵なしという印象のクロモリナットですが、製造コストが唯一のデメリット。そのため販売価格が高い傾向にあります。
チタン
強度の高さと軽量性、サビにくい耐久性を備えているのがチタンナットです。
ホイールナットの中では最も優れた素材ですが、チタン自体の製造コストが高いため、かなり高価なホイールナットだといえるでしょう。
ホイールナットを選ぶポイント
ホイールナットを選ぶ際の大前提は、ホイールの座面形状と一致するものを選ぶことです。
テーパーナット用の座面に球面ナットを押し込んでしまえばネジ山が破損し、ナットが外れやすくなるでしょう。まずは座面形状の確認が必要です。
これ以外にも、ホイールナットを選ぶ際に忘れてはならないポイントがあります。
ホイールナットの規格の読み方
ホイールナットを選ぶときに確認したいのが規格です。ホイールナットの規格は次に挙げる4点で決まります。
- ネジ穴の直径
- ネジ山のピッチ
- 二面径
- 形状
ネジ穴の直径はボルト断面の直径と一致します。上図の「M12」という表記に相当し、単位はミリメートル(mm)です。
ネジ山のピッチはボルトと噛み合う突起の間隔です。
上図の「ピッチ1.5」の表記に該当し、規格表記としては「P1.5」、単位はミリメートル(mm)です。
二面径は上図の「レンチサイズ」に相当し、使用するレンチのサイズが分かります。
また形状は多くの場合「HEX」または「H」で表記され、「六角形」を示しています。
例えば上図のホイールナットの規格は「M12×P1.5 19HEX」です。
安全に走行できるサイズのホイールナットを選ぶ
デザイン性の高いホイールナットの中には、より目立たせるために長めに作られているものがあります。
あまり長すぎると車両幅よりもはみ出すことになり、当然車検を通過できません。
また他の車両や建造物、歩行者にとっては「突起物」であり、思わぬトラブルにつながりかねません。
ホイールの規格に合っていて、なおかつ装着後に車両幅を超えないホイールナットを選ぶようにしましょう。
予算や走行環境・用途に合わせて選ぶ
交換の手間がかかってもできるだけ安く抑えたいならスチールナット、オフロード走行を頻繁に楽しむならクロモリナット、というように予算や走行環境、用途などに合わせて選ぶのも一つの方法です。
ホイールナット取り付けの注意
ホイールナットはただ締め付けるだけで完了、ではありません。
気を付けていても取りつけ方を間違えてしまうケースもあり、間違いに気づきにくいのがホイールナットなのです。
ホイールナットを取り付ける際はどんなことに注意したら良いのでしょうか。
ホイールナットの向きを確認
ホイールナットは取り付ける向きが決まっています。
袋タイプのナットであれば一方向にしか挿入できませんので、間違えることはないでしょう。
しかし貫通ナットの場合は取り付け方向を間違えてしまう可能性があります。
通常、テーパーナットの場合はテーパー側から、球面ナットなら球面側からセットして取り付けますが、実は逆側からも取り付けができてしまうことがあるのです。
もちろんネジは回りますし、締め付けの手応えもありますので気づかないことも。
この状態ですと、テーパーや球面が収まるはずの空間にナットは届かず、摩擦が生まれません。
それだとナットが緩みやすい状態になってしまいます。貫通ナットを使用する際は取り付け向きが正しいか、必ず確認しましょう。
まずは手で締めてから工具を使う
ホイールナットを締める際は以下の手順で行うことをおすすめします。
- ジャッキアップ
- ホイールナットをセットしたら手で締める
- ホイールを揺すってみる
- 手で締める
- ホイールを揺すってみる
- レンチを使って締める
- タイヤが回るようになったら車体を下ろす
- トルクレンチで締める
ホイールナットは強く締めれば安全というわけではありません。
一つのホイールの複数のナットが全て同じトルクで締まらなければ、相互作用で緩み始めます。
そのため、始めから工具を使って一気に締め付けるのは避けましょう。
まずは手で、対角線のナットをペアにして順序よく締めていきます。
タイヤを揺するとネジ山の僅かなズレが矯正され、その後ナットが真っ直ぐに締められます。
ある程度締まったらレンチの出番です。こちらも一気に締め付けず、対角線をペアにして少しずつ力を加えていきます。
仕上げはトルクレンチを使い、規定トルクに締め上げます。
締め付けトルクの過不足に注意
トルクレンチは指定したトルクでナットを締め付けることができる便利な工具です。
これを使うと十分なトルクで締められますし、締めすぎも防げます。
ホイールナットを過剰なトルクで締め付けてしまうと、ネジ山が潰れたり、ボルトが破損するなどのトラブルに繋がります。
ホイールナットの締め付けトルクは軽自動車で80〜100N・m、普通車で100〜120N・mが適正値だといわれており、車の大きさや走行環境などによって必要なトルクは異なります。
ホイールナットの緩みを適宜確認
ホイールを取り付けてから100kmぐらいの走行を目安に、一度ホイールナットの状態を確認しましょう。
車両や走行に見合ったトルクでホイールナットが取り付けられていれば、そう簡単にナットが緩むことは考えられません。
もし緩みがあれば、トルクが合っていない可能性があります。この場合は適正トルクになるように増し締めを行います。
また、大きな緩みがない場合でも定期的に増し締めをするように習慣づけておくことで、ホイール回りのトラブルが回避できます。
ホイールに合ったホイールナットで安全・安心運転を
どんなに強度や耐熱性が高くても、ホイールやボルトに合わないナットを使えば性能は発揮できませんし、大きな事故を招く可能性もあります。
ホイールナットを買い換える際は座面形状や規格をしっかり確認し、不安な場合はショップ店員に相談することをおすすめします。