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オールシーズンタイヤのメリットとは
オールシーズンタイヤはその名の通り、季節を問わず1年中装着したままで走行できるタイヤです。
通常、春から秋はノーマルタイヤ(サマータイヤ)、冬場にはスタッドレスタイヤに履き替えて、春になったら再びノーマルタイヤに戻すため、1年間にタイヤ交換が2回必要です。
タイヤ交換には交換工賃がかかりますし、自分で交換する場合でも手間がかかります。
オールシーズンタイヤなら交換2回分の工賃と手間が省けるメリットがあるのです。
ノーマルタイヤとしての性能
オールシーズンタイヤは、ノーマルタイヤのグリップ性能を引き継いでいます。
そのため乾燥路面はもちろんのこと、雨に濡れた路面でもスリップしにくいのが特徴です。
スタッドレスタイヤとしての性能
オールシーズンタイヤは、スタッドレスタイヤを元にして作られています。
スタッドレスタイヤの接地面には、深いトレッド(溝)の他にサイプ(浅くて細かい溝)が付いており、凍結路面での安全走行を支えています。
一方、オールシーズンタイヤはスタッドレスタイヤからサイプを取り除き、ゴムの材質もノーマルタイヤに近づけているのが特徴です。
選択肢が多いことを示す価格帯
価格帯は非常に幅広く、安いもので10,000円程度、様々な性能を付加したものでは90,000円を超えるタイヤもあります。
オールシーズンタイヤはこんな方におすすめ
冬でも比較的温暖で、降雪があってもあっという間に溶けてしまい凍結しない地域に住んでいる方、毎年「スタッドレスタイヤが必要な場面はない」と思いながらタイヤ交換をしている方にはオールシーズンタイヤをおすすめします。
SUVにうってつけのオールシーズンタイヤ
ぬかるみやウエット路面、雪道などあらゆる路面状況を軽快に走破していくSUVには、オールシーズンタイヤが最適だといえるでしょう。
溝に入り込んだ小石などを走行しながら取り除くことができるようにトレッドが作られているのも、オールシーズンタイヤの特徴です。
オールシーズンタイヤの寿命はどれぐらい?
オールシーズンタイヤは交換することなく使用し続けるため、寿命が短いのではないかとお考えの方もいるのではないでしょうか?
オールシーズンタイヤの寿命を「使用開始から買い替えまでの年数」とすれば、確かにノーマルタイヤより短いかもしれません。
ただし、オールシーズンタイヤが摩耗しやすいわけではありません。
摩耗度合いはノーマルタイヤと同じ
一般的にはノーマルタイヤもオールシーズンタイヤも寿命は3〜5年といわれています。
2年の開きがあるのは、走行距離によってタイヤの摩耗度合いが変わるからです。
逆に、走行距離が同じであればオールシーズンタイヤもノーマルタイヤも摩耗度合いは同じですから、通年で使用しているオールシーズンタイヤのほうが先にトレッドサインが出る可能性が高くなります。
雪道を走るときにはプラットホームが露出していない状態で
スタッドレスタイヤのプラットホームは、溝が残り50%になったサインです。
こうなるとスタッドレスタイヤとしての性能は発揮できず、買い替えとなります。
実はオールシーズンタイヤにはスリップサインとプラットホームの両方が設置されており、スリップサインが出ていなくても、プラットホームが露出していれば冬の雪道走行には適しません。
この場合は買い換えるか、スタッドレスタイヤに交換するかの対応が必要です。
オールシーズンタイヤには2種の寿命があるといえるでしょう。
オールシーズンタイヤの乗り心地は?
オールシーズンタイヤはタイヤ交換の手間がなく便利ですが、乗り心地が悪いのであれば通年使用をためらってしまいます。
ノーマルタイヤやスタッドレスタイヤと比較して乗り心地に差があるのでしょうか。
従来は乗り心地より排水効率を重視していた
オールシーズンタイヤが開発された頃は、乗り心地を犠牲にしているといわれていました。
オールシーズンタイヤは接地面のブロックがV字になっているものが多く、これによって排水効率を向上させてハイドロプレーニング現象の危険性を低減しています。
ノーマルタイヤより柔らかい材質のオールシーズンタイヤは、固いノーマルタイヤよりもウエットグリップ面で劣るため、排水効率を上げるためにV字パターンが採用されてきました。
しかしV字パターンはノイズが出やすいパターンの一つ。安全走行とノイズを天秤にかけ、ノイズには目をつぶるしかないとされていたのです。
通常路面ではノーマルタイヤと同等の乗り心地
現在は、ノイズを軽減しつつ排水効率を維持し、乗り心地を改善したオールシーズンタイヤがほとんどです。
そのため、市街地の乾燥路面走行ではノーマルタイヤの乗り心地と同等か、材質が柔らかいオールシーズンタイヤは多少の振動は吸収できるため、ノーマルタイヤよりも制振性は上と感じることもあります。
スタッドレスタイヤに比べるとノイズは少なく、高速走行をすると違いが顕著になります。
雪道での乗り心地は良い
ノーマルタイヤで雪道を走行する機会は滅多にありませんが、突然の降雪があった場合はオールシーズンタイヤの方が明らかに乗り心地が良いといえます。
タイヤの柔らかさによる制振性の他に、「雪道でも走行できるタイヤ」という安心感が与える乗り心地の良さもあるのかもしれません。
雪道での安全性
冬場もスタッドレスタイヤに交換することなく継続使用できるオールシーズンタイヤは、いざ雪が積もった場合にどの程度安全性が確保できるのでしょうか。
多少の雪なら走行可能!
雪は雨と違い、降る量によって路面の状態が変わります。
もちろん豪雨であれば雨水も深くなりますが、その道をあえて走行しようとする方は少ないでしょう。
しかし雪国では、積雪の上を車が走るのは日常的な光景です。
では、どの程度の降雪ならオールシーズンタイヤで走行できるのでしょうか。
降雪量が少なく、日差しで解けかかりシャーベット状になっている場合や、圧雪された道路、多少の積雪路であればオールシーズンタイヤで走行可能です。
しかし積雪量が多い場合は、柔らかい材質で作られているスタッドレスタイヤのほうが安全に走行できます。
チェーン規制でも走行可能!
冬になるとあちこちで見かけるチェーン規制。装着が難しいですし時間もかかりますが、安全走行のため、また規制遵守のためには仕方ありません。
一方で、スタッドレスタイヤの場合はチェーンを装着する必要がありません。
実は、オールシーズンタイヤもスタッドレスタイヤと同様に、チェーン規制時のチェーン装着が義務付けられていないのです。
ただし「全車両チェーン規制」となれば、スタッドレスでもオールシーズンタイヤでもチェーンが必要になります。
凍結路面は必ずスタッドレスタイヤで
ノーマルタイヤの側面もありながらスタッドレスタイヤとしても走行できるオールシーズンタイヤは、ある意味無敵のタイヤのように感じますがそうではありません。
オールシーズンタイヤは凍結路面の走行ができません。
シャーベット状の雪であれば走行できますが、それが気温の低下とともに凍結してしまったら、オールシーズンタイヤでは太刀打ちできません。
スタッドレスタイヤの接地面にあるサイプはアイスバーンを走行する際のスリップ防止に役立ちますが、オールシーズンタイヤはサイプを取り除いています。
そのため、アイスバーンの走行も危険です。
冬場の気温が常に氷点下に近い地域や豪雪地域に住んでいる場合、あるいはスキーなどでこうしたエリアに足を運ぶ際はスタッドレスタイヤを装着しましょう。
オールシーズンタイヤの選び方
スタッドレスタイヤとノーマルタイヤは、接地面のトレッドを見れば見分けが付きます。
しかしオールシーズンタイヤとノーマルタイヤの見分けは付きにくく、チェーン規制時には高速道路の誘導員にオールシーズンタイヤであることをわざわざ伝えなければ分かってもらえないケースもあります。
自車に装着しているタイヤが確実にオールシーズンタイヤであることを示すために、次に挙げる3種類のマークがついているタイヤを選びましょう。
M+S
タイヤの側面に「M+S」という刻印がされているか確認しましょう。
Mは「Mud」、つまり泥でぬかるんだ道を表し、「S」は積雪路面を表します。
この刻印により、乾燥路面やぬかるんだ道、雪道が走行できることが分かります。
またこのマークがついているタイヤは、ラジアルタイヤを元にして作られています。
接地面の補強のためにベルトが埋め込まれているラジアルタイヤですが、現在一般的に使われている乗用車のタイヤのほとんどがラジアルタイヤです。
スノーマーク
タイヤ側面に「SNOW」という刻印があれば、日本国内で使用できる冬用タイヤとして認証されています。
スノーフレークマーク
尖った山と雪の結晶を模した刻印がスノーフレークマークです。
スノーマークが日本国内なのに対し、スノーフレークマークはヨーロッパの冬タイヤとして認証を受けていることを示します。
オールシーズンタイヤに買い換えるなら雪道で無理をしないこと!
オールシーズンタイヤの性能は向上しているものの、やはりノーマルタイヤとスタッドレスタイヤのユーザーが多いのが現状です。
その理由は、日本の道路の狭さにあります。
オールシーズンタイヤは積雪が多い路面には適していませんが、そこを走らざるをえないこともあるでしょう。
この際、万が一スリップしたら日本の狭い道路では他の車や近隣の民家に衝突するなどの危険性が高くなります。
こうした事故防止の観点から、オールシーズンタイヤは普及が進みません。
一方で、道路が広く作られているヨーロッパでは、オールシーズンタイヤのユーザーが多くいます。
道路が狭い日本でも、道路状況をしっかり把握し、無理な運転をしないことで事故は防げます。
タイヤ交換の手間がいらないオールシーズンタイヤに買い替えを検討している場合は、冬場の運転により一層注意を払うことで安全走行ができ、満足度が高くなるでしょう。