タイヤから見る燃費向上対策
タイヤ選びが燃費に関係あるってご存知ですか。ガソリンの消費量をCo2排出量を目指した今話題のエコ商品とは。気になる性能から仕組みまでを紹介します。車選びや運転テクニックと合わせ環境対策としてチェックしてください。
最近では燃費の良い車が人気を集めていたり、燃費を向上させる運転テクニックがしばしば紹介されるようになったりと、車を運転する方なら誰でも燃費を気にするようになりました。ですが、タイヤの選び方やメンテナンスでも燃費が良くなることをご存じでしょうか。
今回はタイヤから見る燃費向上対策をご紹介します。車選びや運転テクニックと合わせることで、大きな燃費向上効果を狙っていきましょう。
目次
はじめに
車において、タイヤは道路の路面に接触する唯一の部品です。タイヤは加速、減速、コーナリングといった車の基本的な性能に直結しています。タイヤが加速力を無駄なくアスファルトへ伝えられれば、アクセルを余計に踏む必要がなく、燃費が良くなります。
また、コーナリングの際にはブレーキを踏んでいなくても車は減速しますが、減速の程度が小さければアクセルを踏み直す時間が減り、結果的に燃費が良くなります。このように、タイヤの性能は加減速に直結しているため、燃費にも影響を及ぼします。
では、燃費を向上させるという観点からタイヤを見た場合、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
エコタイヤを装着する
エコタイヤとは、原料となるゴムの配合や、タイヤに彫られた溝の模様(トレッドパターン)を改良することで、転がり抵抗を減らしたタイヤのことです。低燃費タイヤとも呼ばれます。エコはエコロジーから取られています。
燃費が良くなるとガソリンの消費が少なくなり、CO2(二酸化炭素)の排出量が抑えられるため、環境に優しい、というのがエコタイヤという名前の由来のようです。
転がり抵抗が減ることで燃費が良くなる、という点についてもう少しご説明します。エンジンの駆動力がタイヤに伝えられ、路面に接触したタイヤが回転することで車は加速することができます。この際、タイヤが回転するエネルギーが100%路面に伝えられるわけではありません。
タイヤが回転している時には転がり抵抗と呼ばれる摩擦力が働いており、エネルギーのロスを生んでいます。エコタイヤは転がり抵抗を低く抑えることでエネルギーのロスを防ぎ、同じ量の燃料でも長く走れるようにしています。
「転がり抵抗が低くなるということはグリップ性能が落ちるということではないか」と心配になる方もいらっしゃることでしょう。実際のところ、転がり抵抗性能とグリップ性能はトレードオフの関係になっています。特に路面が濡れている際のウェットグリップ性能は安全に直結するため、気になるところです。
ですが、ご安心ください。エコタイヤについては転がり抵抗とウェットグリップ性能、両方に対して日本自動車タイヤ協会(JATMA)が詳細な基準と試験項目を定めており、試験結果が基準をクリアしていないタイヤはエコタイヤとして販売することができません。
燃費に影響する転がり抵抗性能には AAA, AA, A, B, C の五段階で等級が設けられており、等級が高くなるほど転がり抵抗が小さくなります。また、ウェットグリップ性能については a, b , c, d の四段階の等級が設けられており、ウェットグリップ性能が d 以上かつ 転がり抵抗性能が A 以上のタイヤのみがエコタイヤとして認められます。
最後に、エコタイヤを装着することでどの程度の燃費向上が見込めるのかご紹介します。走行条件にもよりますが、転がり抵抗性能の等級がAAAのエコタイヤは、等級がCのタイヤに比べて燃費が約 4% ほど向上すると言われています。
たかだか4%か、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、次にご紹介する空気圧チェックによる燃費向上効果と合わせれば、実感できるほどの効果になるでしょう。
空気圧をこまめにチェックする
タイヤの空気圧は自然と減っていきます。最低でも一ヶ月に一度はタイヤの空気圧を点検し、空気を入れ直した方がよい、と言われています。タイヤの空気を適正な空気圧まで充填した後、一ヶ月間で5%~10%も抜けてしまいます。空気が抜けてしまうとタイヤの形状が潰れるように変形してしまいます。
この変形はタイヤの転がり抵抗に大きな影響を及ぼします。転がり抵抗が増えると速度を維持するためにアクセルを余計に踏む必要があり、燃費が悪くなってしまいます。
コーナリングの際にも減速の度合いが大きくなるため、再加速するためにアクセルを大きく踏むことになります。大幅な加減速は燃費悪化の元。タイヤの空気を定期的に入れ直すことで燃費を向上させることができます。
具体的にどれくらい燃費が向上するかというと、適正な空気圧より50kPa低い状態のタイヤで一般市街地を走行すると、燃費が 2.5% ほど悪くなるようです。多くのタイヤの指定空気圧となっている230kPaを例に挙げると、空気を適正な空気圧に充填してから早くて三ヶ月、遅くても半年が経過すると燃費が 2.5% 悪くなる、ということです。
逆に言えば、適正な空気圧を維持していれば、燃費面では常に 2.5% の得をしている、とも言えます。
とはいえ、燃費が良くなるからと言って空気圧を高くしすぎるのも考え物です。空気圧が高すぎると乗り心地が悪化したり、タイヤの中央部分のみが磨り減ったりと、別の悪影響が現れます。燃費を意識しすぎてタイヤの交換頻度が増えてしまっては元も子もありません。適正な空気圧を保つことが重要だ、ということですね。
ちなみに、2014年にJATMA(日本自動車タイヤ協会)が実施したアンケート調査では、タイヤの空気圧を適切な頻度で点検できているドライバーは 24.1% である、と報告されています。
安全や節約に対する意識が高いドライバーを対象に集計しても、タイヤの空気圧を適切な頻度で点検できているドライバーは 37% でした。安全や節約に対する意識が高いドライバーでも忘れがちなタイヤの空気圧点検。あなたはいかがでしょうか。
最近では、多くのガソリンスタンドやカー用品店が無料で空気圧を点検してくれるようになりました。車を日常的に利用していれば、一ヶ月のうち一度もガソリンスタンドに行かない、ということはないでしょう。
月の初め、中頃、終わり、といった大まかな目安を決めておき、ガソリンスタンドやカー用品店に立ち寄った際に店員さんへ「空気圧を見てください」とひとこと声をかけてみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回はタイヤと燃費の関係についてご紹介しました。タイヤは車の中で唯一、路面に接している部品であり、燃費にも大きく影響しています。エコタイヤは転がり抵抗を小さくすることでエネルギーのロスを少なくし、燃費を向上させています。
また、空気圧が低い状態では燃費が悪化するだけでなく、タイヤのバーストなど、大事故に繋がるおそれもあります。「安全運転が燃費向上に繋がる」とよく言われますが、車のメンテナンスによる安全対策も燃費の向上に役立つということですね。
具体的な試算については、エコタイヤを装着することで4%、空気圧をチェックすることで2.5%の燃費向上効果が見込めます。効果が単純に複合すると考えて計算すると、6.4%程度の燃費向上が見込めることになります。塵も積もればなんとやら。運転テクニックなどによる燃費向上効果を加えれば、燃費は確実に良くなることでしょう。