タイヤの空気圧はTPMSでモニタリング
TPMSはタイヤの空気圧を自動的に監視してくれるシステムです。ドライバーに対して異常を検知した時に通知してくれたり、メンテナンスの手間が軽減したりするため世界的に普及しています。なぜ良いのか解説いたします。
皆様はTPMS(Tire Pressure Monitoring System : タイヤ空気圧監視システム)をご存じでしょうか?TPMSとはその名の通り、タイヤの空気圧を自動的に監視してくれるシステムのことです。ランフラットタイヤを装着されている方はTPMSも併せて装着しなければならないため、ご存じでしょう。
世界的には普及しているTPMSですが、日本では未だ法規制の検討段階にあり、ご存じでない方も多いようです。今回はタイヤの空気圧を自動で監視し、ドライバーにいっそうの安全を提供してくれるTPMSについて解説します。
目次
TPMSとは
従来、タイヤの空気圧はドライバーが定期的に点検することで適正な空気圧を保つ必要がありました。タイヤの空気圧は1ヶ月で5%~10%も低下してしまうため、1ヶ月に1度、タイヤの空気圧を点検し、空気を入れ直すことが望ましい、と自動車業界から推奨されています。
空気圧が所定の値より低くなると燃費が悪くなったり、ハンドルが重くなって走行性が悪くなったり、高速走行時にバーストを引き起こしやすくなったりと、良いことがありません。タイヤの空気圧はなるべく一定に保ちたいものです。
ですが、人は物事をついつい忘れてしまうものです。空気圧のチェックを忘れて数ヶ月、ということはよくあることです。タイヤの空気圧低下に由来する事故も後を絶ちません。また、パンクによって徐々に空気が抜けてしまっても、ドライバーが気づかないこともあります。
TPMSはタイヤの空気圧を常に監視し、タイヤが所定の空気圧を下回るとドライバーに通知してくれます。ドライバーはTP通知が来たタイミングでタイヤの空気を入れ直せば良いため、メンテナンスの手間が軽減されます。
タイヤに異物が刺さることでゆっくりと空気が抜けていく、いわゆるスローパンクの場合はドライバー自身では気づきにくいものですが、TPMSが稼働していればパンクをすぐに察知できますし、どのタイヤがパンクしているのかも分かります。
タイヤのパンクは身近なトラブルです。カーフロンティア社の調査によれば、新品のタイヤを購入してから3年以内に、実に半数以上のドライバーがパンクを経験しています。
TPMSは導入に相応のコストがかかるとはいえ、身近なトラブルであるパンクに対しても迅速に対応できるようになります。
TPMSの種類
現在の主流となっているTPMSはタイヤのバルブにセンサーを取り付けるタイプのようです。センサーは常に空気圧を監視し、車内に設置したコンピュータと無線で通信してタイヤの状態を知らせます。また、ほとんどの製品はタイヤの温度も測定してくれるようです。
タイヤが高温になると摩耗が激しくなるだけでなく、空気圧が異常に高くなったり、バーストに繋がったりします。最近は車内にTPMS専用のコンピュータを設置するのではなく、スマートフォンに通知する製品もあります。気になるお値段ですが、2018年12月現在は5,000円~15,000円程度の製品が多いようです。
バルブにセンサーを取り付けるデメリットとして、見た目があまり格好良くない、という点が挙げられます。もちろんセンサーの小型化は進んでいますが、見た目を気にされる方はホイール部分にセンサーを取り付けるタイプのものも検討してはいかがでしょうか。
TPMSを標準装備している高級車はおおむね、ホイール部分にセンサーを取り付けるタイプの製品となっています。
一方、ホイール部分にセンサーを取り付けるタイプのものは、センサーを装着できるホイールが限られていたり、あるいはセンサー側が特定のホイールに取り付けられなかったりと、組み合わせの相性があります。最寄りのカー用品店や整備工場に相談すると良いでしょう。
また、バルブに取り付けるにせよ、ホイールに取り付けるにせよ、重量のあるものを回転部に取り付けることには変わりありません。TPMSを導入した時には、念のためバランスを調整しておいた方が良いでしょう。
タイヤのバランスを取るためには専用の機械を使うことが望ましいため、カー用品店や整備工場で実施してもらいましょう。店舗やタイヤサイズにもよりますが、バランス調整の工賃は1本あたり500円~1,000円程度のようです。
他の手法として、タイヤの回転数から空気圧の低下を検知するものもあるようです。タイヤの空気圧が減るとタイヤの外形が変わり、回転数が多くなります。
近年の車はタイヤの回転数を検出する仕組みを既に持っているため、回転数の増減を検知するようにソフトウェアだけ更新してしまえばタイヤの空気圧を監視することができます。当然、導入も安価で済みますが、現在のところは信頼性が低いため、研究開発の段階にあるようです。
TPMSと法律
日本ではランフラットタイヤを除き、TPMSの装着が義務化されていません。一方、先進諸国では義務化が進んでいます。日本以上の車社会であるアメリカでは2007年に完全義務化となりました。
他にも、2012年にはヨーロッパ諸国、2013年には韓国でTPMSの装着が義務化となりました。2019年には中国も新車に対してTPMSの装着を義務化することが決定しています。日本における法規制は未だ検討段階ですが、そう遠くない将来に日本でも義務化されることでしょう
TPMSと法律という観点でもうひとつ注意したいことが、電波法です。タイヤと電波にいったい何の関係が?と思われるかもしれません。先述したように、現在主流となっているTPMSのセンサーは無線通信によってセンサーの情報をやりとりします。
このとき使用できる電波の周波数や出力は国によって異なり、規格が法律で決められています。電波を発する製品のうち、日本で使用する製品には技術基準適合マーク、いわゆる技適マークが記載されていなければいけません。いまお使いのスマートフォンも、正規に購入した製品であれば技適マークを何らかの形で確認できるようになっています。
電波は無制限に使えるものではありません。目的に応じて周波数や出力の割り当てがあり、その範囲で使用することが認められています。ある電波を発する製品が、総務省の定める規格に適合していると認められた場合に限り、技適マークが与えられます。
日本製の製品であれば当然に技適マークを取得していると考えられますが、海外メーカーの輸入製品を購入される場合には、その製品が日本において技適マークを取得しているかどうか、くれぐれもご注意・ご確認ください。
技適マークを取得していない製品を購入して利用すると、仮にそのことを知らなかったとしても電波法に違反してしまいます。
まとめ
今回はタイヤの空気圧を自動で監視するTPMSについて解説しました。TPMSはタイヤの空気圧や温度を常時モニタリングし、異常を検知した時にドライバーへ通知してくれます。
ドライバーは運転中のタイヤの状態について機械に任せればよいため、メンテナンスの手間が軽減されますし、安全運転にも繋がります。世界では装着の義務化が進んでいるため、日本でもそう遠くない将来に義務化されることでしょう。
タイヤの空気圧を定期的に点検するのが面倒だと感じる方や、タイヤのパンクが心配な方は、十分に導入を検討する価値があるものです。
一方、現在の日本ではTPMSが一般的でないため、海外メーカーの輸入製品が多く出回っています。中には日本の電波法に違反する製品もあるため、購入時には技術基準適合マークを取得しているかどうか、ご自身でご確認ください。
電波法に抵触する製品を購入して使用してしまった場合、そうと知らなかった場合でも電波法違反として検挙されてしまう場合があります。この記事が、正しいTPMSの知識を得られる一助となれば幸いです。