公開日:2018.05.29 更新日: 2018.05.30

梅雨入り前にはタイヤのチェックを入念に

雨とタイヤの関係について学んでみよう。安全なカーライフを実現するための基礎知識を学ぶ。ハイドロプレーニング現象が発生すると路面はスリップしやすい状態になります。梅雨時期に気をつけたいことを何でしょうか。

梅雨時、何より運転時に気をつけたいことはスリップによる交通事故でしょう。JAF(日本自動車連盟)によれば、雨天時に交通事故が発生する確率は晴天時の約5倍にものぼるそうです。また、雨天時の夜間はいっそう視界が悪くなるため、交通事故が発生する確率は晴天時の日中に比べて約7倍になるそうです。

今回は梅雨入り前にチェックしておきたいタイヤの状態について、基礎的な知識からご説明します。

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雨天時のスリップを防ぐために

そもそも、なぜ路面に雨水が溜まっているとスリップが発生しやすくなるのでしょうか。濡れていると滑りやすくなる、というのは当たり前のことのように思えますが、スリップが発生する原理についてもう一度おさらいしておきましょう。

タイヤは路面に接触することで加速、減速、といった摩擦力が必要な動作を行っています。ここで、雨天時にタイヤと路面の間に雨水が入り込むと、路面とタイヤが接触する面積が小さくなり、摩擦力が低下します。摩擦力が低下すると、車の運動に必要な力がタイヤから路面に伝わらなくなり、スリップが発生します。

したがって、摩擦力の低下を防ぐために雨水をタイヤと路面の間から取り除く必要があります。タイヤの溝は、この雨水を取り除くために設けられています。

仮に、全く雨が降らないことが確実であり、かつ舗装された路面を走るのであれば、雨水によって摩擦力が低下することはないため、タイヤの溝は必要ありません。実際、レーシングカーは溝が無いスリックタイヤを使用することで大きなグリップ力を獲得しています。

レーシングカーと異なり、一般のドライバーが晴天時と雨天時でタイヤを履き替えるわけにはいきません。そこで公道を走る車のタイヤには製造時から溝が設けられており、晴天時と雨天時の両方に対応できるようにしています。したがって、タイヤが摩耗することで溝が少なくなると排水能力が落ち、雨天時のスリップが発生しやすくなります。

スリップが発生しやすい条件

スリップはカーブを曲がるときに起きるものだと思いがちです。ですが、スリップは車の操作に必要な力が路面に伝わらないために、タイヤと路面が「滑る」状態となっていることを指します。したがって、追い越し時の急加速、不意の急制動など、タイヤに力がかかる様々な場面においてスリップが発生しやすくなります。

また、道路標示(いわゆる白線)の上や、マンホールの蓋は、水に濡れると摩擦力が極端に小さくなります。雨天時に運転する際は、道路標示やマンホールをなるべく踏まないように気をつけましょう。

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雨が降り始めた時間帯は特に注意が必要です。降り始めの雨水は路面の埃や砂が雨と混じることで泥状になります。泥状となった雨水は潤滑剤のような作用をもたらし、摩擦力を極端に低下させてしまいます。また、雨が降り始めた時間帯は晴天時の感覚で運転してしまいがちです。本来は速度を落とすべき場面であっても、周囲の車と同じように運転してしまいます。

交通量が多い道路は路面がすり減りやすく、しばしば「わだち」状になっています。わだちに雨水が溜まると小さな池のようになり、タイヤの溝では排水しきれなくなります。タイヤの溝が雨水を排水しきれなくなると、タイヤが雨水の上を船のように滑走する「ハイドロプレーニング現象」が発生します。ブレーキもハンドル操作も効かなくなる、とても危険な現象です。

ハイドロプレーニング現象は物理的にも危険な状態ですが、ドライバーの動揺を誘いやすいという点でも危険な状態であると言えます。操作が効かなくなることに動揺したドライバーは、急ハンドルや急ブレーキといった操作を行ってしまいがちです。

急ハンドルを切った状態で速度が落ち、ハイドロプレーニング現象が収まってタイヤがグリップ能力を回復してしまうと、車があらぬ方向へ曲がってしまいます。とっさの事態へ適切に対処することは困難ですから、ハイドロプレーニング現象が起こらないような運転を心がけることが賢明でしょう。

タイヤの交換は梅雨時の前に余裕を持って

スリップサインが現れていなくても、溝が少なくなるにつれて雨天時のグリップ性能は落ちていきます。スリップサインが現れるのはタイヤの溝の深さが1.6mmとなった時ですが、JAF(日本自動車連盟)が実施した実験によれば、タイヤの溝の深さが3mmほど残っている場合でも、新品のタイヤに比べると雨天時の制動距離が極端に長くなることが実証されています。

梅雨時に入る前にタイヤの溝をチェックし、溝が減っていたらスリップサインが現れていなくても交換することが望ましいでしょう。

また、可能であれば雨の日にタイヤを交換するのも避けた方が良いでしょう。交換したばかりのタイヤはホイールや路面に馴染んでいないため、十分なグリップ性能を発揮できません。

また、新品のタイヤは骨格となる構造がやや膨張するため、空気圧が下がりやすい状態となっています。特に梅雨時は気温と湿度の両方が高くなるため、タイヤの空気圧が変動しやすくなります。

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以上のことから、タイヤメーカーはタイヤを交換した直後に「慣らし走行」を実施するよう推奨しています。慣らし走行とは急加速や急ブレーキ、急ハンドルといったタイヤに負荷のかかる操作を避け、時速80km以下で乾燥路面を100kmほど走ることです。

慣らし走行を実施することでタイヤがゆるやかに変形し、ホイールに馴染みます。また、慣らし走行を行うとタイヤの表面が剥けるため、タイヤが路面に馴染んで本来のグリップ性能が発揮できるようになります。

逆に言うと、慣らし走行が済んでいないタイヤはグリップ性能が万全ではないため、雨天時にはスリップを起こしやすくなります。梅雨時に入ってから慌ててタイヤを交換するのではなく、時期に余裕を持ってタイヤを交換することで心理的にも余裕を持って運転することができます。

まとめ

今回は梅雨入り前に気をつけたいタイヤの状態について、基礎の知識からご説明しました。雨天時に最も気をつけたいのはスリップに由来する事故です。雨天時にはスリップが特に起きやすくなりますが、これはタイヤと路面の間に水が入り込むことで摩擦力が小さくなり、本来のグリップ性能を発揮できなくなるためです。

タイヤの溝は雨水を排水するために設けられた構造であり、雨天時に走行する際の命綱です。タイヤの摩耗具合は頻繁にチェックし、常に十分なグリップ性能を発揮できるよう心がけましょう。

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雨天時の運転で気をつけたいこととして、まず降り始めの時間帯が挙げられます。雨水が泥状になりやすいため、ひとしきり雨が降った状態よりも路面が滑りやすくなっています。また、交通量の多い道路は路面がすり減り、雨水が溜まりやすくなります。

このような路面ではタイヤが雨水の上を滑走するハイドロプレーニング現象が発生しやすくなるため、速度を落とし、水溜まりを避けるなど、ハイドロプレーニング現象の発生をあらかじめ抑制することを意識して走行しましょう。

以上のような事態を避けるためにも、梅雨に入る前には特にタイヤの状態をチェックするべきです。スリップサインが出ていなくても、タイヤの溝が少なくなっていると雨天時の制動距離が長くなってしまいます。

スリップサインが出ているか否かは、公道を走るための最低限の条件でしかありません。かといって、梅雨に入ってから慌ててタイヤを交換しても、すぐにはタイヤの性能が発揮できません。時間にも心にも余裕を持って、適切な時期にタイヤを交換しましょう。

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