カーリースとは、月々定額の料金で新車をマイカーのように利用できるサービスです。維持費も含まれたプランを利用すれば、ドライバーがメンテナンスを実施する必要がなく、車にありがちな突発的な出費が発生しない、といった特徴があります。
一方で、カーリースは一括払いやローンより割高となる、といった意見も見られます。カーリースを提供する側は当然のようにカーリースがお得であると言いますし、車を販売する側はカーリースより一括払いやローンの方がお得であると言います。
実際のところはどうなのでしょうか。今回はカーリースがビジネスとして成り立っている仕組み、一括払いやローンとの比較など、様々な観点からカーリースを見ていきましょう。
目次
カーリースの仕組み
カーリースは様々なメリットを前面に押し出し、特にローンで車を購入する場合に比べてお得であるということを主張しています。ですが本当にその通りなのでしょうか?
うまい話には裏がある、とまでは言いませんが、他の車を利用する手段と比べる前に、まずはカーリースがどのような仕組みでサービスとして成立しているのか、ということについては知っておいた方が良いでしょう。
まず大前提として、カーリースは車を利用できる期間、リース期間が決まっています。リース期間はおおむね5年間に設定されている場合が多く、他に3年間や7年間などの期間があります。また、月あたりの走行距離も決まっています。多くの場合、月に1,000km、1年間で12,000kmと設定されているようです。
カーリースは、メンテナンスに必要な費用を含めて考えると確かにお得であると言える部分もあります。ですが、もちろんこれには理由があります。リース終了後の車はまだ利用できる「はず」であり、資産としての価値が残る「はず」です。
カーリースの場合、ドライバーが支払う月額料金は、車本来の価格から、リース終了後に残る「はず」の資産価値を差し引いたうえで、ドライバーが支払う総額を60ヶ月(5年間)で分割しています。
走行距離や車の状態にもよりますが、5年落ちの車でも2割~5割程度の資産価値が残るため、ドライバーの支払料金を安く設定できるのです。
こうして見ると、カーリースは賃貸住宅の料金体系によく似ています。ローンの料金体系は持ち家や分譲マンションをローンで支払う場合に似ています。
他の車を利用する手段、例えばレンタカーはホテルや旅館といった一時的な滞在施設の料金体系に似ています。以降ではカーリースとローンを比較していきますが、住宅の料金体系に当てはめて考えてみると、ご自身にとってどのサービスが有意義であるか理解しやすくなるでしょう。
リース、ローン、一括払い、どれが良い?
結論を先に述べておきましょう。ドライバーによる、としか言えません。それぞれにメリットとデメリットがあるため、ご自身のニーズに合ったサービスを選びましょう。今回は分かりやすくするため、トヨタのパッソ(2WD 5ドア X)の新車を例に挙げてシミュレーションを実施してみます。
前提として、トヨタ公式サイトによる2020年5月時点における最新型パッソの車両本体価格(小売希望価格)は消費税込みで1,199,000円(119万9,000円)となっていることを置きます。
・カーリースの場合
5年契約でボーナス払いは無く、メンテナンス不要のプランで、定額を支払う場合を考慮します。リース会社にもよりますが、月額料金はおおむね25,000円程度です。5年契約となると総額は25,000x60ヶ月=1,500,000円となります。
ちなみに+30,000円のボーナス払いをプランに含めると、月々の支払料金は20,000円まで下がりますが、ボーナス払い時に差額が上乗せされるため、注意する必要があります。
カーリースのメリットは、何より出費の見通しが立てやすいということでしょう。頭金も不要ですから、例えば生活環境や職場が変わったために突然車が必要になった、という時には便利です。
今回はメンテナンス不要のプランを比較に挙げましたが、追加で数千円を支払うことでメンテナンスをリース会社にお任せすることもできます。
カーリースのデメリットは、リース契約の期間が終了した後、車をリース会社に返却しなければならないため、車を良好な状態に保つ必要があるということです。リースが終了した後、返却した車が設定した残価より低いと査定された場合、差額を支払う必要があります。
途中解約も基本的にはできません。やむを得ず途中解約する場合、支払う予定だった金額を精算したり、違約金を支払ったりする必要があります。
・ローンの場合
1,199,000円を5年間ローン(60回払い)で購入する場合を考慮します。頭金は無いものとします。金利が固定で2.2%の場合、毎月の返済額は21,120円、総返済額は1,267,227円です。一見するとカーリースより支払金額が安くなるように見えます。
ただし、この金額には購入時にかかる自動車税、重量税、環境性能割といった各種税金や登録諸費用は含まれておりません。また、購入後も毎年の自動車税、車検時の重量税と自賠責保険料、エンジンオイルやタイヤなどの消耗品といった維持費は、ドライバーの持ち出しとなります。
どのくらい必要になるのか、という点はドライバーによるため、単純に計算はできないのですが、大ざっぱに見積もっても1年あたり10万円程度、5年間で50万円は考えておく必要があるでしょう。トータルの支払総額は170万円程度となり、カーリースの場合より少し高く付きます。ただし、車の資産価値はドライバーに残ります。
ローンのメリットは、実質的には車を所有できる、という点でしょう。ローンで車を購入した場合、使用者はドライバーの名義になりますが、所有者はローンを組んだディーラーや信販会社の名義になる場合もあります。
といっても、ローンが完済されれば所有者もドライバーに移転されるため、完済後は名実ともに車はドライバーのものになります。乗り換えたい場合は車を下取りに出すことができますし、5年落ちの車であれば新車の2割~5割程度の資産価値があるため、トータルの金銭面ではカーリースの場合よりむしろお得になると考えてよいでしょう。
ローンのデメリットは、安定した収入が無ければローンの審査を通らない、実際にはほとんどの場合で頭金が必要、購入費用に加えて利息を支払わなければならない、といった点でしょう。また、返済が滞った場合には車を差し押さえられてしまう可能性もあります。
もちろんそれは銀行にとっても嬉しくない事態ですから、事前に支払い能力が審査されます。
・現金一括払いの場合
現金一括払いについてはあまり考慮することがありませんが、ローンと同じく各種税金や車の維持費にお金がかかります。
現金一括払いのメリットは、購入当初から使用者も所有者もドライバーの名義となることでしょう。また、ローンと異なり利息を考慮しなくてよいため、トータルの支払金額は最も安くなります。
現金一括払いのデメリットは、購入に必要な費用が作れるまでは車を利用することさえできない、という点でしょう。多くの人々が車をローンで購入するのは、利息を払ったとしても、すぐに車を利用できるというメリットがあるためです。
まとめ
今回はカーリースがビジネスとして成り立っている仕組み、一括払いやローンとの比較など、様々な観点からカーリースを見ていきました。
カーリースは月々の支払い負担やメンテナンスの負担が軽くなるというメリットがあります。
一方で、リース期間の総支払額はローンで車を購入する場合よりも実際には高く付いてしまう、途中契約できない、リース後に想定されている残価より低く査定されると、差額を支払う必要がある、といったデメリットもあります。
カーリースを利用するべきか、ローンを組んで車を購入するべきか、という判断は、ドライバーのあなたが「何を重要と考えるか」によります。
車を単なる移動手段と捉え、改造には一切興味が無く、メンテナンスの金銭的コストより時間的コストの方が重要である、と考えるような方にとってはカーリースは魅力的なサービスでしょう。
対して、車を自分に合わせた快適な空間にしたい、トータルの支払額を抑えたい、日々のメンテナンスくらいは自分で実施する、という方はローンで車を購入した方が良いでしょう。大事なことは、ご自身でメリットとデメリットをよく比較し、ご自身で決断することです。今回の記事が、満足度の高いカーライフの一助となれば幸いです。